tse-17,tse-24,11-24mm

自分でできる。作家のための展覧会会場の撮影。いわゆるインスタレーションビューについて。

撮影しているとよく聞かれるので、展示会場の簡単な撮影方法を解説します。レジデンスなどで撮影を頼むことが出来ない場合などでもある程度自分で撮影出来るようになっていた方が良いと思います。インスタレーションなどは残らないので、その後のアーカイブのためにも。「モノ派」なども写真の記録がその後の評価に重要な役割を果たしています。

RAWて、何?プロファイルて、何?という人でも撮れる方法を書いておきます。気合いを入れてしっかり撮る場合はここに書く限りではありませんが、専門的に写真を撮っていない人が無理のない範囲で撮る事に限定して解説していきます

  1. 必要なもの
  • カメラ
    一眼レフにこだわる必要はありませんが、露出がマニュアルで決定できるもの。すべてオートしかできないものだと面倒です。
    フルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズとはなにか?
    この違いはセンサーサイズです。センサーサイズが違うと何が違うかと言うと一つには同じ焦点距離1)レンズの主点からセンサーの焦点まで距離が焦点距離。通常mmで表示される。焦点距離は写る範囲に関係します。レンズをつけたときに写る範囲が異なります。センサーが大きいフルサイズ(36mm×24mm)の方が広い範囲が写ります。小さいAPS-C(23.6mm×15.6mm)はレンズが映し出す像の真ん中だけをトリミングすることと一緒なのでより狭い範囲しか写りません。写すことが出来る範囲を「画角」と言います。以後、画角と言います。マイクロフォーサーズはAPS-Cより更に小さいセンサーですのでこの中では同一の焦点距離のレンズであれば、もっとも画角が狭くなります。その他にも違いはあるのですがここではこの事以外重要ではないので無視します。

    センサーサイズ

    センサーサイズ。赤がフルサイズ、青がAPS-C、緑がフォーサーズ。レンズが映し出す像をこのセンサーの大きさで切り取っているとも考えられる。

  • レンズ
    焦点距離距離が短ければ、短いほど画角が広くなります。しかしながらあまりに画角が広いレンズですと、絵作りが難しくなります。ギャラリーなどの室内であればフルサイズセンサーで16mmから35mmぐらいの画角が使いやすいかと思います。16mmでは入り切らないことも当然ありますが、ここは2枚で見せるなどある程度割り切りも必要です。野外や広い空間であればもう少し焦点距離が長いものが必要になるかもしれません。APS-Cのセンサーの場合はレンズの焦点距離をだいたい1.6倍した数字がフルサイズセンサーの画角と同等になります。下に画角のサンプルを作ったので画角の参考にしてみてください。いろいろな焦点距離のレンズがある方が良いのですが広角レンズは高価なものが多いのです。16-35mmぐらいのズームレンズが一本あれば重宝すると思いますが、普段の日常的なスナップなどでは使いづらいレンズなので必要なときだけレンタルするのが良いかと思います。通常シフトレンズ2)シフトレンズとは大型カメラなどで行う事が出来る「アオリ」を簡易的に行う事が出来るレンズ。「アオリ」とは光軸とセンサーの位置が通常は不変であるのに対して、意図的に変化させる事。シフトレンズとは「アオリ」の前板のみの動きを出来るようにしたもの。シュナイダーなど一部のレンズでは後ろ板を動かせるものもあり。は必須ですが、使い方や仕組みがわからないとほぼ意味を成さないのでここではシフトレンズは使いません。

    レンズの画角

    フルサイズセンサーでの画角サンプル。 参考までに緑の線でiphone6の画角を書いて置きました。同じ場所から構えたときこれぐらいの範囲しか写りません。カタログなどに35mm換算で、などと書いて有る場合はこの赤い線のミリ数のことです。

    sony a7r Ⅱ

    ちなみにシフトレンズを使い行うアオリとはこのような状態にカメラとレンズを動かすことです。ここまで極端な動きはほぼないですが。

  • 三脚
    垂直、水平を出して撮影するのに必要です。画面全体になるべくピントを合わせて撮影するため絞りを絞るので、シャッタースピードが遅くなりなります。その時のブレ防止にも必要です。もう一つの利点としては同じ構図の写真が何枚も撮れます。これが意外と重要です。基本的にはこれだけあればなんとかなります。
  1. カメラの設定
    RAWデータ3)センサーが捉えた生のデータ。現像処理が必要になるがレンズ補正や、ホワイトバランスの調整、ノイズ処理、露出など精度の高い処理が可能で高品質の写真が完成するが、現像ソフトの使い方など煩雑なものが多い。現像ソフトの代表的なものに、Adobe Camera Raw、Adobe Lightroom、Capture Oneなどがある。の現像をしない前提での設定を書いておきます。いつか来るべき日のためにRAW+JPEGで設定しておいてもよいと思います。

    記録画像設定

    jpegの一番高画質なものに設定。

    記録画像設定

    raw現像ができるようになった日のために。

    色空間はsRGBに設定します。

    _mg_0009_s

    感度はなるべく低いほうがノイズもないのでISO100に設定しておきます。
    ホワイトバランス4)様々な光源下で白いものが白く見えるように再現する機能。光源の色温度に合わせて設定します。太陽光に比べハロゲンランプや「色温度が低い」と表現します。日陰など青っぽい光は「色温度が高い」と表現します。は太陽のマークでだいたい良いと思います。ハロゲンランプの場合は電球のマークの場合のほうが良いかもしれません。撮影して確認してみてください。ホワイトバランスのオートだけはダメです。同じ会場内での異なる写真の色が変わる可能性があります。ホワイトバランスは固定してください。
    撮影モードはM(マニュアル)にしておきます。同様にレンズのフォーカスもMF(マニュアル)にしておきます。

    _mg_0014_s

    絞りはF8からF11の間くらいに設定します。以前にも書きましたが絞りすぎると回折という現象がおき、写真の鮮鋭度が下がります。光は粒であり、波であるというロマンチックな性質があるためです。(焦点距離が短いほど回折の影響を受けやすくなりますので、とりあえず一枚写真を撮ってピントの確認を行ってください。)シャッタースピードはその場の明るさに合わせて任意の値を選択します。後述します。

  2. 撮影
    三脚にカメラを載せて水平、垂直にして、(水準器やカメラに内蔵の水準器を使います)構図を考えます。こればかりは文章では書けないのでなんとか収まりのよいところを探します。平面構成の要領で前後の重なりなどにも留意しながらアングルを決定します。
    構図が決まったらピントを合わせます。
    ライブビューができるものであればライブビューで拡大してマニュアルで合わせます。ファインダーやライブビューで表示されている画像は常に絞り値がそのレンズの最も明るい(開放)値になっている点に注意してください。ピントがあっている範囲が最も狭い状態とも言えます。よって実際に撮影される写真とはピントのあっている範囲が異なります。絞りはシャッターを押した瞬間に絞り込まれます。ピントの合う範囲はピント合わせたところからレンズ側が浅く奥が深くなります。デジカメなので撮影した画像をその場で確認してみてください。詳しく知りたい方は「被写界深度」「錯乱円」などで検索してみてください。
    露出を決定します。
    カメラに内蔵の露出計でとりあえず露出を決定します。反射光式露出計ですので白い壁が多いと実際よりも暗く写りますので一段明るくなるように設定します。絞りは上に設定したままでシャッタースピードを変更して露出を調整します。赤く囲んだところに露出計が表示されています。だいたいで構いません

    露出

    真ん中がカメラが考える適正露出

    露出

    シャッタースピードを遅くすることで右に一目盛動かす。カメラが考える適正より一段明るい状態。

    上記で露出が決定しましたら、撮影します。この時本来であればレリーズを使ってカメラがブレるのを防ぐのですが、持っていない場合はタイマーで撮影します。最近のカメラは10秒と2秒が設定できる物があります。
    シャッタースピードは記憶しておいてください。絞りは動かしません。いくら撮影してもコストがかからないので、シャッタースピードを変更して明るめと暗めを撮影しておきます。明るめに3枚、暗めに4枚ほどシャッタースピードを1/3(1/2のカメラもある)段ごとに撮影しておけばどれか一枚は良い感じになっていると思います。カメラの液晶の明るさはあてにならないので、パソコンで撮影後確認して適切な明るさの写真を探してください。目安ですがホワイトキューブのギャラリーで全体に明るい感じであれば白壁のG(グリーン)の値が235ぐらいになっている写真を選べばよいかと思います。あくまでざっくりとした目安ですが。

  3. 補足
    特別な意図がなければ撮影する環境の光源の色をなるべく揃えます。目で見えている以上にカメラでは光源の違いがはっきりとわかります。と言うよりも人間の目が優秀すぎて補正しているので気づきにくいだけです。同様に人間の目が捉えているほどの明るさの階調をカメラは捉えることが出来ません。よって写真に写すところと写さないところを選択しなければいけません。
    室内がハロゲンランプでギャラリーに開口があり外の光が入って来る場合は、注意してください。ホワイトバランスを電球マークにしていると外の光が青くなってしまいます。外光を青くならず撮影することはもちろん可能なのですが、それには写真の仕組みなどいろいろと分かっていないと撮れないので、その時間があれば作品を作ったほうが有益です。解決策としては夜撮る。安易ですがこれが一番簡単です。窓の外が暗くなってしましますがここは諦めてください。
  4. 例えばこんな機材
    最後にコストと性能のバランスが良いもの機材をサンプルに書いておきます。以下に拘る必要はありませんが、一つの例としてみてください。もちろんこれよりよい機材はいくらでもありますが、上で説明した撮影方法がそこまで精度が高いものではないので、このあたりでも問題ないかと思います。逆に言うとこれ以上高い機材を使ってもその性能をほとんど使い切れないとも言えます。年に何度も使わないようであればレンタルでもよいかと思います。次々新しいものがでますので買っていたらキリがないです。2016年10月現在の1日のレンタル料金も書いておきます。(マップレンタル調べ)
    canon 6D 9,500円
    Canon EF16-35mm F4L IS USM 3,000円
    QUICKSET ハスキー3段 1,000円
    合計 13,500円

この方法で壁掛け作品がホワイトキューブにあり、開口部がなく光源が同一であればそこそこきれいに撮影できると思います。床置の作品や天井からの吊りと壁掛けの平面作品が色々と混ざっている場合や光源が色々と混ざっているインスタレーションなどですとこの方法では、上手く画面が収まらなかったり、空間の光の色に不自然な被りが起きてしまうかもしれません。また額装にアクリルや硝子などが入っている場合は一工夫必要になる場合があります。対処法はいくつかあるのですが、方法が煩雑であったりここで使用していない機材が必要であったりと気楽に撮るという今回のコンセプトと外れますので、今回は割愛します。

脚注   [ + ]

1. レンズの主点からセンサーの焦点まで距離が焦点距離。通常mmで表示される。焦点距離は写る範囲に関係します。
2. シフトレンズとは大型カメラなどで行う事が出来る「アオリ」を簡易的に行う事が出来るレンズ。「アオリ」とは光軸とセンサーの位置が通常は不変であるのに対して、意図的に変化させる事。シフトレンズとは「アオリ」の前板のみの動きを出来るようにしたもの。シュナイダーなど一部のレンズでは後ろ板を動かせるものもあり。
3. センサーが捉えた生のデータ。現像処理が必要になるがレンズ補正や、ホワイトバランスの調整、ノイズ処理、露出など精度の高い処理が可能で高品質の写真が完成するが、現像ソフトの使い方など煩雑なものが多い。現像ソフトの代表的なものに、Adobe Camera Raw、Adobe Lightroom、Capture Oneなどがある。
4. 様々な光源下で白いものが白く見えるように再現する機能。光源の色温度に合わせて設定します。太陽光に比べハロゲンランプや「色温度が低い」と表現します。日陰など青っぽい光は「色温度が高い」と表現します。

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